イベントレポート 2020年12月21日 co×Co-lab
まちの研究所株式会社と春蒔プロジェクト株式会社は、共創パートナーシップ協定「co×Co-lab」を締結し、10月16日に「『教育イノベーション × クリエイティブコミュニティ』が地域の新しい形をつくる」と題したトークイベントを開催しました。本レポートでは、第二部の様子をレポートします!
(第一部の様子はショートレポート・詳細版 もご覧ください)
第二部:地域で始まる、多様性のあるくらし -「教育」「文化性」をテーマに、住む場所・仕事をする場所をえらぶ-
【SPEAKER】
・中川 綾 氏/学校法人茂来学園 理事、一般社団法人日本イエナプラン教育協会理事、株式会社アソビジ代表取締役社長
・小緑 直樹 氏/株式会社アスタンス 代表取締役
・高橋 靖典 氏/ アーキタイプ株式会社 代表取締役、一般社団法人藤野エリアマネジメント 代表理事
・松本 理寿輝/まちの研究所株式会社 代表取締役、ナチュラルスマイルジャパン株式会社 代表取締役(まちの保育園・こども園 代表)
・田中 陽明氏/ 春蒔プロジェクト株式会社 代表取締役、co-lab 企画運営代表
【MODERATOR】
岡庭希/まちの研究所株式会社 広報・企画担当
第二部のテーマは「地域で始まる、多様性のあるくらし」。ゲストスピーカーには、長野で日本初のイエナプランスクール 大日向小学校の開校に従事された中川綾さん、まちの保育園の卒園児の保護者でもあり、この春から軽井沢に教育移住をされた小緑直樹さん、co-lab渋谷キャストのメンバーであり、神奈川県旧藤野町のまちづくり、シュタイナー学園の理事長としても活動をされている高橋靖典さんをお迎えしました。
まずは、ゲストスピーカーの皆さんの自己紹介・事業紹介から。
中川さん「学校法人茂来学園大日向小学校、通称“しなのイエナプランスクール”という、日本初のイエナプランスクールを、2019年4月に開校しました。「誰もが、豊かに、そして幸せに生きることのできる世界をつくる」という建学の精神を掲げています。イエナプランで大事にしたいことの一つに「20の原則」というものがあります。人間、社会、学校って何だろうか、どういう存在であるべきなのかというものが書かれているのですが、それらを、こどもを真ん中にして、保護者、教職員、できれば地域の方もいっしょにつくっていきたいなと、思っています。地域との連携の例としては、学校名をいっしょに決めさせていただいたり、ランチルームに外からの入り口をつくって学校給食を地域の方々も食べられるようにしていたり、運動会を地域に以前からあった地域運動会とあわせて開催するなどの取り組みがあります。」
小緑さん「こどもとの時間を最大化させたいという想いから、個人で会社を経営しています。こどものやりたいこと、熱中できることを応援したいという想いがあった中で、2020年4月に開校した素敵な学校との出会いもあり、3月に軽井沢に教育移住をしました。こども自身も学校をとても楽しみにしていますし、私達も新しい学校づくりに携われること、大好きだった軽井沢に住めることに大きな期待をもっていました。自身もクライアントは東京に多く、妻も東京の会社に務めていることから、やりくりに不安もありましたが、このコロナ禍で夫婦ともにフルオンラインで業務ができるようになり、少し不安は軽減されたように思います。前までは移住の選択肢はありませんでしたが、実際に住んでみて、食事や自然・景色、学校コミュニティの豊かさに触れ、充実した時間を過ごせています。まだ半年ですが、一年後も「都心もよかったけど軽井沢生活もいい感じ」と思えるように日々を楽しみたいです。」
高橋さん「2011年に藤野(神奈川県相模原市/旧藤野町)に移住しました。きっかけは子供の進学でした。現在はco-lab渋谷キャストにも入居している「アーキタイプ」という会社の経営と、藤野エリアマネジメントという活動をしています。co-labにいることがきっかけで、地元でもクリエイターの拠点をと思い、廃ビルをつかってクリエイターやアーティストの活動の場をつくりました。もともと、藤野は芸術家の多い町ではあったのですが、近年アーティストやクリエイターがさらに増えて、ビジネスが生まれて…という循環が実際に起きています。また、2005年にオルタナティブスクールのシュタイナー学園が開校し、定期的に移住があることで、この過疎化の流れの中でも人口の下げ止まり効果がありました。保護者が藤野や近隣エリアで起業をしたり、家を建てたりすることでの経済効果や、地域活動に入っていくことでさらに地域が盛り上がっているという様子もあり、住みやすい町になっていると思います。」
ここから、今回の協定にも繋がる、都市と地域における暮らしの変化、そして可能性についての話へと移っていきます。ゲストスピーカーの皆さんと、春蒔プロジェクト田中氏、まちの研究所代表松本でディスカッションを行いました。ここでは少し内容を抜粋してご紹介します。
田中さん:皆さんのお話を伺い、教育の拠点が地域に根づくことによってもらたらされる影響の大きさを感じました。地域が元気になり、そこで暮らす人たちがいきいきとしている。地域がガラパゴス化することで、幸福度があがっていくのではないかと感じています。井の中の蛙にならずに、グローバル視点を持ちながらも、それぞれの人が自分の価値基準でウェルビーイングを追究できるというバランスが、今最も必要なのではないでしょうか。
松本:ロンドン大学のピーター・モスさんの言葉で、「リアルユートピア(実現可能な理想郷)」をコミュニティの参加でつくっていくという話がありましたが、まさに自分たちの未来を自らつくっていくコミュニティ、それを学校を中心としながらやっている主体者、そして参加者。皆さんのお立場からの話が聞けて、とても希望を持てました。日々、こどもたちから感じるのは、「社会が期待する誰か」になるのではなく「自分」になるんだというパワー。こどもたちといると、大人もそういった感覚を感じやすいように思います。教育がコミュニティの中心になっていくことは大人にとってもよい影響があると、可能性を感じています。
高橋さん:働き方の変化の中で、郊外をベースに都心と行き来するデュアルライフも、職種によっては定着化していく可能性を感じます。また、地域密着人口が増えることは、地域にとっても様々なプラスの効果があります。学校も地域のプレイヤーのひとりとして、元々の地域コミュニティと交わり合いながら、地域の新しい未来を考えていけると素敵だと思っています。いろいろな教育の選択肢ができている中で、そこで育ったこどもたちが、どういう未来をつくってくのか。個人的にはとても楽しみです!
小緑さん:コミュニティがより強くなるのではと感じています。働き方も、教育も、選べる時代になってきている中で、「人生をどう生きたいか」という自分の価値基準がすごく大切になる。その地域に集まってくる人たちは価値基準が似ていたり、コミュニティ化しやすい集まりになるのではないかと思っています。内的センサーを磨いたり、ワクワクを大切にする。より自分の感動に敏感になることが大事なのではないでしょうか。こどもにも、そういったワクワクを日々体験してもらいたい、大切にしてほしいと思っています。
中川さん:昨年と今年を比較しても、移住のハードルが下がったことをすごく感じます。これまでは入学にあたり母子移住が多かったのですが、家族全員での移住が増えました。一方で、教育移住となると、子どもと親の思いにズレが起きやすいように思います。学校では、「家族全員が幸せになる」ことが譲れない第一条件だとお話しています。自分にとって心地の良い場、生き方を突き詰めていくと同時に、その場を自分たちでつくっていくという意識が欠かせないと思います。「みんなでいっしょにつくっていけるよね、大変だけど」という意識に、みんながなっていける未来があると良いですよね。
それぞれの地域で、仕事や教育、コミュニティの選択肢を持ちながら、皆が主体的に関わりあい、自らの価値基準でウェルビーイングを考えられる社会をどうつくっていくか。
今後のくらしの大きな可能性、豊かさ、挑戦を感じたお話でした。
co×Co-labでは、こどもとクリエイターの連携プロジェクトや、そこから広がるまちづくりを今後も進めていきたいと考えています。案件のご相談や、パートナーとして関わってくださっている方を随時募集をしております。
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